偽陽性とウインドウピリオドは検査方法によって異なる
HIVウイルス感染の検査にはスクリーニング検査と確認検査があり、スクリーニング検査には偽陽性が出てしまうということは既に説明しました。
■スクリーニング検査と確認検査についての参考記事はこちら
→ スクリーニング検査と確認検査、偽陽性について
偽陽性の出る確率はスクリーニング検査の検査方法によって異なります。
一般的に行われるHIV抗体検査(PA法、CLIA法)での偽陽性が出る確率は0.3%(1,000人に3人)前後であるのに対し、HIV抗原抗体検査では(偽陽性が出る確率が)0.5%~1%と数倍高くなります。
また、妊娠をしている妊婦の方では偽陽性の確率が高くなる傾向にあります。
迅速検査での偽陽性
迅速検査(IC法)は検査から1時間以内に感染の判定が可能な検査方法で、現在一般的に利用される迅速検査には、ダイナスクリーンとエスプラインとがあります。
ダイナスクリーンは従来から利用されていた検査方法で、感染が疑われる行為から12週間(約3ヶ月)が経過していれば検査が可能です。検査方法としてはHIV抗体のみで判断をするのですが、偽陽性が出る確率は一般的なHIV抗体検査(PA法、CLIA法)よりも高くなります。
それに対し、比較的新しい検査方法であるエスプライン HIV Ag/Abでは、採取した血液を遠心分離し抗原抗体を同時に検査しますので、偽陽性の出る確率が格段に下がります。(一般的なHIV抗体検査とほぼ変わらない程度の偽陽性確率)
ダイナスクリーンは遠心分離する必要がないため手軽ですが、偽陽性の確率を考えるとエスプライン HIV Ag/Abの方がはるかに優れた検査方法であるといえます。
遺伝子検査(NAT検査)
遺伝子検査では、HIVウイルス遺伝子(核酸)を数万倍以上に増幅させ検査する検査方法で、英語で”Nucleic acid Amplification”と表記します。一般的にその頭文字を取ってNAT検査とも呼ばれます。
遺伝子検査は精度が高いため、スクリーニング検査ではなくウエスタンブロット法(WB法)と同じ確認検査として用いられます。
検査方法によるウインドウピリオドの違い
HIV検査が可能となるまでの期間(ウインドウピリオド)についての概要は以前の記事に記載していますが、これも検査方法により異なってきます。
■ ウインドウピリオドの期間についてはこちらを参照してください。
→ HIV検査をしても陽性が出ない期間(ウインドウ期間)
スクリーニング検査で一般的に行われるHIV抗体検査(PA法、CLIA法)でのウインドウピリオドは4週間~6週間(個人差有り)で、抗原抗体同時検査であればもう少し短い2週間~4週間程度になります。
これに対し確認検査(ウエスタンブロット法)でのウインドウピリオドは、スクリーニング検査よりも若干長い4週間~8週間を必要とします。(遺伝子検査でのウインドウピリオドはかなり短い7日~10日を実現しています。)
目的に合った検査方法を選ぶ
このように、検査方法によって偽陽性の確率やウインドウピリオドが変わってきますので、目的に合った検査方法を選ぶ必要があります。
例えば、
- HIV感染が心配で1日でも早く検査をしたいのであれば遺伝子検査(NAT検査)
- 保健所や医療機関での検査で後日結果を受け取りに再度足を運ぶのが大変な場合は即日検査
- 8週間~12週間が経過しているのであれば一般的なHIV抗体スクリーニング検査
といった具合です。
不安な行為があった日から8週間~12週間が経過していれば、一般的なHIV抗体スクリーニング検査で全く問題がありません。
HIV検査キットで行っている検査方法はこのHIV抗体スクリーニング検査(PA法)になります。医療機関や”時間が決まっている保健所”へ出向く時間がない方や、医師や看護師と対面するのが嫌だという方は8週間経過後にHIV検査キットを利用すればOKです。(理想は12週間経過後での検査です。)
また上記1や2の場合でも、最近は保健所での検査でも場所によっては実施していますので確認してみるとよいでしょう。
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